Myconid

 人型をした直立歩行する菌類、それがマイコニッドである。人型と言っても外見はほぼキノコであり、言われてみると分岐した節が手足のように見えなくもないが、よもやそれが動き出そうとは思いもよらないほどに、見た目はやはりキノコだ。動きは緩慢なので目の当たりにしても逃げることは難しくないが、外皮こそ硬くて食えたものではないが、その内側は焼き立てのパンのように柔らかく香ばしいと共に珍味なので、食欲に引き留められるのも無理はない。ただ、だからと言って危険性が薄いわけではなく、生態を知らずして近づくのも利口ではない。彼らの生態を知るのには、まずはその繁殖方法に触れておくのが良いだろう。
 マイコニッドは、生き物の死骸に菌糸を伸ばして、その栄養分を吸収することで生命活動を維持している。また、その死骸に自らの胞子を植え付けることで死骸を苗床とし、胞子はものの三時間ほどでアメーバ状の新たな生命体となる。そしてそのまま二週間もすれば、不定形だったそれは柔らかな肉体を形成しマイコニッドの成体となる。地面に胞子を埋めて繁殖していると思われていた時期もあったが、現実はそれよりずっとおぞましいものであったわけだ。
 彼らは本来好戦的ではなく、他の生物に食料とされてしまうことを避けるために、吸引することで窒息を起こさせる毒性の胞子を頭の笠から大量にばら撒いて危険を回避しようとしているものと考えられてきた。だが、よく考えてみれば、地面ではなく死骸が繁殖活動の対象だったのならば、相手を窒息させることは苗床を作るため行動だったとも考えられる。彼らの頭には胞子が詰まっているだけで、狡猾など呼べるような知能は持ち合わせていない。そこに感情は存在せず、あるのは事実だけだ。感情論に惑わされず、事実だけに目を向ければ、種として強い個体へと移行するために、敢えて強い相手が好戦的な態度をとるよう促していたのではないかとさえも考えられるのではないだろうか。彼らの行動のすべては生存本能に過ぎない。植物を含む生物の進化への本能とはなんと恐ろしいものだろう。
ちなみに胞子が死骸を覆い操っていると勘違いしている者も多いが、これを読めばそうではないことは容易に理解できるだろう。

—解説———————
 モンスターマニュアルのキャラ絵が、AD&Dのそれとそっくりなことからも、元ネタはAD&Dのようです。同レベルの中では平均の倍以上と群を抜いて攻撃力が高いので、いきなり立ち向かっていくのは得策ではないですが、個人的にはあんまり苦労したイメージもない敵キャラ。むしろレベル5はマップがテクニカルなので、シンボルキャラが変な位置に現れたせいで、移動の妨げになってた邪魔さの方が印象は強いかも。
 キノコ人間というと思い出すのは、昔、日本の特撮映画で「マタンゴ」という作品がありまして、おそらくはドラクエに出てくる敵キャラのマタンゴもこの映画の影響下にあるキャラクタでしょう。漂流した南海の孤島で禁断のキノコに魅せられた人々が、それを食することで見るもおぞましいキノコ人間に変わっていってしまうというホラー映画です。何故か『ハワイの若大将』と同時上映という、意味不明な組み合わせで公開されたことでも話題になったようですが、SF好き、ホラー好きにはカルト的な人気のある作品でもあります。キノコ人間は比較的よく出てくるありがちなキャラですが、僕の中ではいつまでたってもイメージはマタンゴですね。

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