ザナドゥ

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Xanadu …

 1985年、発売して間もなくパソコンゲーム市場を席巻、ゲーム専門各誌のランキングで十数ヶ月間、首位の座に君臨し続けた不朽の名作アクションRPG、それが『Xanadu(ザナドゥ)』。シンプルでありながらも求められる戦略性は奥深く、プレイヤーの心を捉えて離さなかった。迫力のデカキャラ、10階層にもおよぶ広大なマップ、装備を変更する度に変わる主人公のグラフィック、多種多様なアイテム群など、プレイする者を飽きさせることを知らず、たかだかフロッピーディスク二枚に収められた世界は本物の冒険に満ちていた。その人気は前代未聞の40万本セールスという伝説的な記録を生んだ。市場形態そのものが変わってしまった現在となっては、もはやこの記録が破られることはないだろう。

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Story …

 偉大なる千年王クーブラ・カーンにより地下深くに築かれた光明の都ザナドゥ。だが地上の半分さえも統治し、とこしえの桃源郷とさえ謳われた栄華は、もはや遠い過去の出来事に過ぎない。王亡き後、実に四百年もの長きに渡る権力闘争により、国は完全に疲弊してしまった。権力闘争は統治下にあった辺境の国々の独立を許すこととなり、また第六王朝時代に起きた「人類、非人類の戦い」では、ザナドゥの地下地方へと逃げ延びた魔物たちが現代に至るまでも人々の脅威となり、禍根を残すこととなった。それでも人々は魔法使いのテンプルの創設や、商魂逞しい活発な経済活動など、多くの出来事を通して懸命に日々を暮らしていた。そこにはいつしかある種のささやかな平和さえ見出していたのかもしれない。
しかし魔王ガルシスの襲来により、そのささやかな平和さえも終わりを告げ、ザナドゥは長きに渡る暗黒の時代を迎えることとなる。略奪と蹂躙、破壊と殺戮、恐怖と混乱がザナドゥを支配し、人々はただ生かされ、無意味に死んでいった。それでも屈辱の日々を耐え凌ぎ、ついにもたらされた予言は救世主の到来を示していた。時の王ジュリデンはこの予言にすべてを託し、可能性のある若者たちを王城へと集めるのであった。選ばれし者たちの中にはそう、君の姿もあった…。

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System …

 ざっくりと説明すると、ザナドゥは、サイドビューのフィールドを動き回り、モンスターと戦ってお金やアイテムを手に入れたり、ショップで装備を買い揃えたりしながら、地下深くに潜むキングドラゴンの討伐を目指すアクションRPGゲーム。フィールドは幾つものレベルと呼ばれるエリアで構成され、それぞれをCAVEと呼ばれる洞窟が結んでいる。各レベルにはタワーと呼ばれるダンジョンがあり、そこにはモンスターだけでなく、多くのお金やアイテム、そして時にはボスモンスター的なデカキャラが待ち受けている。

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 サイドビューのフィールドは複雑に入り組んでいるが、一つのゴールを目指すようなものではなく、プレイヤーが自由に散策することができるオープンなフィールドだ。回り道をしなければ辿り着けない場所や、鍵のついた扉で閉ざされた道など、好奇心をそそられるような仕掛けは一つや二つではない。中には二段ジャンプや連続斜めジャンプといったテクニックと頭脳を駆使しなければ目的地には辿り着けない場所もあり、パズル的要素もふんだんに盛り込まれている。ただ面白がって無駄に歩き廻るのはあまりおすすめできない。何故ならそう、ことわざにもあるように「腹が減っては戦はできぬ」からだ。ザナドゥにはFoodの概念がある。Foodは時間と共に消費され、底をつけば今度はHPがどんどん減ってしまう。フィールド移動は一早くマップを把握、目的を持って移動することで、Foodの節約を心掛けるのことがポイントだろう。

 

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 もちろん、フィールドには敵モンスターが待ち構えている。敵はシンボルエンカウントで、ぶつかると敵集団とのトップビューの戦闘シーンに切り替わる。キーボードを叩いて剣を振るといった操作はなく、プレイヤーキャラクタを敵に体当たりさせれば攻撃となり、倒すと一匹一匹が宝箱に変わる。多い時には一人で九体の敵を相手にしなければならず、囲まれれば大ダメージは免れない。慌ててそこから逃げようと背中を見せようものなら大惨事となるのは必至だ。被害を抑えるためにも、宝箱の陰から攻撃したり、敵の行動パターンを見極めて正面を避けて攻撃したり、あるいは剣だけでなく魔法で攻撃したり、基本となるのは各個撃破だろう。慎重にかつ狡猾に戦いを進めなければ勝利は掴めない。もっとも、ゲームをクリアできる状態にあっても、普通に挑んでは歯が立たない雑魚キャラも数多く存在するのがこのゲーム。戦略的撤退も必要になってくる。

 

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 敵とは逆に助けになってくれるのがフィールド上には幾つもの点在するショップだ。病院、宿屋、寺院、武器屋、楯屋、鎧屋、魔法屋、食料品店、鍵屋の9種類がある。基本的には能力値のCHR(カリスマ)値が高いとその分費用が安く済む仕組みになっている。まず、病院や宿屋はHPの回復。違いは支払った金額分だけ回復するか、一括支払いで全回復するか。ただ宿屋はCHRの影響を受けないため、病院に比べてに割高になってしまうのが一般的。お金にゆとりがないのはこのゲームの常なので、どうしてもHPが心もとないという時に、少しだけ回復するというのが利用方法だろうか。次に寺院はプレイヤーキャラクタのレベルを上げてくれる。逆説的に言うと、経験値が溜まったからと言って戦闘中に勝手にレベルアップしたりはしないので定期的に訪れる必要がある場所。ただし、KRM(カルマ)があると門前払いを食らってしまうので、間違ってもカルマキャラと呼ばれるモンスターは倒してしまわないように。残りの武器屋、楯屋、鎧屋、魔法屋、食料品店、鍵屋は、読んで字のごとくの商品が売っている店だ。武器、楯、鎧、魔法はどのレベルのショップでも同じ品揃えをしている。魔法に至っては最強の魔法であるDEATHさえも買えてしまう。強力な品がそう簡単に買えるわけではないが、定期的に無難な線で買い揃えてみたり、我慢して我慢して一気にランク高い装備を買ってみたりといった、図らずも個性の目立つプレイスタイルの幅が出やすい形になっている。食料品店ではFoodが購入できる。前述の通り、Foodは切らせてはならない消耗品。消費量はMaxHPに比例して増えていくので、常に残量に目を光らせていなければならないぞ。そして最後に鍵屋。実はある意味このゲーム最大の攻略ポイントともいえるお店。KEYはタワーなどでは特に消費が激しく、お店で購入しないわけにはいかないが、キャラクタレベルに合わせて価格が高騰していく。このため先に進めば進むほど負担は重くのしかかってくる。KEYがなければ先に進むことはできず、最悪ハマってしまうこともある。KEYをいかに安く買い溜めしておけるかが、まさにこのゲームの鍵となるのだ。

 

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 さて、ここまでシステムを説明してきたが、ぶっちゃけまあそんなものかといった程度の印象ではないだろうか。むしろ何が要因でこのゲームがそれほどまでに売れたのか疑問に思うかもしれない。だが実はここまで敢えて語って来なかったが、このゲームを戦略的かつ魅力的にしている最大の特徴がある。それは敵モンスターや収集できるアイテムなどがすべて有限だということだ。例えば、各種モンスターはフィールド上で2か所に棲息し、1グループを討伐するごとに次のグループが出現するが、このグループは4グループしか出現しない。つまり同じ種類のモンスターはフィールド上に8グループしか現れない。タワーにも同種のモンスターは配置されているはずだが、一度排除したらそれで終わり。同じ場所にモンスターが現れることはない。これらはつまりモンスターが持つお金やアイテムも有限だということを示している。もちろんタワーにはお金やアイテムも配置されているが、有限であることには変わりはない。では、お金が有限だといったい何が起こるのだろうか。

 例えば、レベル1ですべてのモンスターを倒しても得られるお金は7070。普通は5000弱程度でしかない。このゲームの重要なファクターがKEYであることは既に述べたが、レベル1でKEYを消費する場所はフィールドで4ヶ所、タワーで35ヶ所にもおよび、戦って得られるKEYは10個に満たない。つまりKEY30個は鍵屋で購入しなければならないということになる。まあこの時点での単価は100、合計3000程度なのでとりあえずは何とかなるが、例えば初回プレイでまさか最初からレベル全体の収入の半分以上がKEYの代金に消えていくとは思いもよらないだろう。残りが2000として、今時というかドラクエ以前の昔から、RPGではお金が溜まったら新しい武器や防具を買うのはごく普通の展開。だがこのゲームではHP回復やFoodの購入コストを考えたら、とてもじゃないがこの段階で装備品の購入などには手が回らない。幸い装備品はタワーで拾うこともできるが、毎度毎度、状況に見合った装備がご丁寧に用意されているわけではない。いつ手に入るとも知れぬ拾い物に期待して、いつまでも脆弱な装備ではいられないだろう。さらにこうした状況は先に進むにつれてややこしいことになってくる。FoodやKEYのコストが莫大になっていくからだ。普通のRPGならば敵と戦いお金を稼げばいい。しかし敵が有限の本作ではそうもいかないし、戦闘はつまるところ回復コストの増大にも等しい。無理して戦うとよりコストが掛かる場合もある。お金が有限であること、それはつまりプレイ全体に戦略的な行動指針が必要になることに他ならない。

 

 ここまでくると今度は、回復コストを減らすこと、つまり戦闘で無駄なダメージを避ければいい、ということに気付くはずだ。魔法はプレイヤーが自由に遠隔操作できる強力な攻撃手段だ。目の前に宝箱のバリケードを作って、そこから魔法攻撃すればダメージを受けずに勝利することもハッキリって容易だ。名前の頭にDegと付く魔法なら、誘導しなくても全体にダメージを与えてくれるから、なおさら。ただ遠隔操作中はキャラクタは無防備になり動くことができない。使い時を間違えると危険な諸刃の剣でもある。ウッカリ敵の不意打ちにあり、思わず操作を誤って魔法で宝箱を破壊してしまうなんてことも、誰もが一度はやってしまうありがちな失敗だ。ではウッカリがなければ完璧な攻撃方法なのだろうか。Deg系を使っていれば無敵だろうか。残念ながらそうとも言えない。魔法にばかり頼っても、剣の腕は上がらない。実はキャラクタのレベルにはファイターレベルとウィザードレベルが別々に設けられており、偏った戦いで偏ったレベル上げをしていると、いずれ魔法の効かないモンスターに出くわした時には、それこそ全く歯が立たないなんてことになりかねない。同じような話は他にもある。ザナドゥでは装備品やアイテムにそれぞれ熟練度が設けられている。魔法攻撃では武器の熟練度が上がらないのはもちろん、ノーダメージ、ノー熟練度な楯や鎧では、一度に受けるダメージがとんでもないことになったりするのだ。

 

つまるところ、そもそもダメージのすべてを回避しようとすること自体が間違いである。ザナドゥではどれだけ巧くダメージをコントロールできるかが重要なのだ。適度にダメージを食らうことで適度に防具の熟練度を上げ、武器の熟練度を上げる。時には病院でお金を使ってHPを回復し、時にはアイテムを使ってHPを回復して、アイテムの熟練度を上げることで以降の効果をアップさせる。経験値が溜まれば、装備品に頼ることなくレベルアップでキャラクタ自身を強化できるが、安易に上げてしまうのはKEYやFoodのコストアップにも繋がるので、我慢できる内は我慢。装備品はなるべく拾い物で済ませて節約を心掛けつつ、いざお金が溜まってきたらランクの高い装備品や魔法を買って一気にパワーアップ。そうなれば、苦労して戦っていた敵もあっけない程に簡単に倒せるだろう。

 

ザナドゥはリソースが有限であることにより、あらゆる要素が絡み合って、プレイに戦略性を求められる。現代のスマホゲームのように、全てにおいて快適であるよう作られたモノに慣れてしまっていると、なかなか理解するのは難しいかもしれないが、発売当時の他のゲームは、時間稼ぎの理不尽な謎解きも、運だけが頼りな場面も、言ってしまえばクリアできなくても、それが皆当たり前だった。ザナドゥとて難易度の高さで言えば、当時のそんなゲーム達にも引けは取らないだろう。しかし、そこには理不尽さや、運頼みではない面白さ、ただ力押しを繰り返し運よく先に進むのではなく、それまでの積み重ねを生かしながら戦略を練って道を切り開いていく、試行錯誤することの面白さがあった。物語さえほとんど語られず、操作やシステムのシンプルなゲームであったからこそ、余分なことに意識を捕らわれることなく、当時としては美麗なグラフィックや、今も称賛されるほどに幻想的な楽曲も相まって、プレイヤーは考えることに没頭することができ、そしてそこに本当に冒険を夢見ていたのではないだろうか。

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